2013年06月20日
第22回 映画「きっと、うまくいく」 (最終回)

びっくりの満足感の完成度の高さ、ともかく奇跡的なバランス感覚とでももうしましょうか、どうやらインドで問題になってる学歴偏重主義への批判もりこみながらでも、あかるく楽しめ歌って踊って、けっこう悲しくシリアスな場面もあるのに自殺者多いってデータまで見せられ、個々の思惑など無視される容赦ない教育システム、そこに未来の幸福があると信じる親御さんの切実な願い。
飛行機とぶかとばないかの冒頭からしてグッと身を乗り出さざるを得ない小さな謎をチラ見させられ、テンポよい語りで10年前の青春物語と現在の謎解き冒険活劇が並行して映し出されるのですが、エリート大学でのてんやわんやのエピソードの数々はどれも魅力的、主人公のトビー・マグワイアみたいな男の子がまたとびっきりかっこよくて、成績至上主義への批評の言葉、でも勉強はだいすきっていうのが、まっとう過ぎて胸がスカっと。
でもそんなかっこいいヒーローでもすべて正しいわけじゃない、なんてところがチクチクときおりかいま見られて、もうぜったいコイツ救われないて感じだった学長がじょじょになんとなく憎めなくなって、という過程もほほえましく、主義主張があまりに異なって交流など無理ではという印象だったのに、しつこく何度もぶつかるうちにいつのまにか、というのはけっこう感動、誰しも、鉄の鎧のなかにはやわらかな心根があるらしく。
カメラワークがまためっぽうよくて色彩のうつくしさもさることながら、かなりの長時間飽きなかったのは物語の楽しさもあるけれど、視点がたえず移り変わる面白さにも恩恵があったんでは、歌い踊る場面の躍動感あっちからこっちからアップだったり引いたりのメリハリに目は釘づけ、そしてヒーローの正体さぐる旅を映す空からの映像、山間を縫って走る車を追う視界がもう、空とぶ浮遊感をあたえてくれて。
そして謎解きの旅の進行とともに展開されるかつての仲間たちのいま現在のしあわせのかたち、勝った負けたの価値観やら世の大勢にしたがいそうに金勘定の世界にひっぱられて、みたいなやっぱり不滅っぽい空虚さ見せられながらも真の幸福とは? もしかして? 予想というより期待感たかまるうちに、はやく見つけたい秘密をかかえてたヒーローの信念いったいどんな結実もたらしているのか。
終盤のワクワク感、彼に迫りつつある臨場感はもう、ふたりの親友のきもちにぴったり寄り添える楽しさあじわえて、シチュエーションがまたなんなのってぐらいのすばらしさ、それはきっと情熱と探究心のゆくえ、ラストのやりとり、期待してたけど期待以上の気分のよさに場内拍手! エンドロールもうつくしく。
惜しむらくは置換の言葉、インドなだけにすこし複雑。
きっと、うまくいく 2009年インド ラージクマール・ヒラニ監督作品
公式サイト(ボリウッド4) http://bollywood-4.com
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本コラム「シシシシシネマルシェ」は今回が最終回です。
これまでに紹介した映画は全22本。コラムは下記からお読みいただけます。
Posted by eしずおかコラム at 12:00